アニオニュソス

アニメ、それは生きるよろこび。

はいふりはもっと評価されるべき

みなさんご無沙汰してます。

今回は2016年に放送されたアニメ「ハイスクール・フリート」の感想を書きます。

www.hai-furi.com

 

最近利用し始めたdアニメストアで、久しぶりにはいふりを観ました。

個人的には結構好きな作品なのですが、世間的にはあんまり評価されてないのかな?という印象もあり、「そもそもはいふりという作品はどう見るべきなのか」ということについて書いておきたいと思います。

 

★★以下はネタバレを含みますのでご了承ください★★

 

 

フィクションとしての「はいふり

当然ながら、はいふりはフィクションなわけで、フィクションとして良く出来ているかどうかに注目すべきと思います。

例えば、こちらの方(https://togetter.com/li/961248)が言っているように、艦橋の構造は実際の陽炎型駆逐艦の構造とはだいぶ異なるようです。しかし、これはフィクションとしての作品を成立させるための工夫であり、「アニメーションとしてはこれで正解」なわけです。実際、艦橋メンバーをあそこに集中させることでテンポよく場面が進むようになっており、見事な工夫だと思います。

また、アドミラル・シュペーとの交戦の際に機関を不完全燃焼させて煙幕を張ったり、比叡との交戦では潮の満ち引きを利用して座礁させたりと、いろいろリアリティとしては無茶な感じのする演出もありました。煙を出したくらいで視界が悪くなったりするか?とか、10分〜20分で潮の高さがそんなに変わるのか?とか、いろいろ突っ込もうと思えば突っ込めるわけです。しかしながら、そこを突っ込んでも仕方ない気もする。むしろ、晴風は作品を通して一貫して逃げ続けたわけで、その際の演出としては見ごたえのあるものだったと思います。

 

「逃げに徹すること」がこの作品のポイント

僕がとても興味深いと思ったのは、晴風が最後まで逃げ(よけ)続けたことです。シュペーにしろ、比叡にしろ、晴風は逃げの戦術に徹しています。

これは戦いを主題にする多くのアニメとは全く違う作りだと思います。例えば私が好きな某魔法少女ものの作品では、主人公は「全力全開!」などと称して相手をボコボコにした上で助けるみたいな流れですが、はいふりの場合、そもそもほとんど攻撃しません。例えば比叡とか、沈没しない程度に相手をボコって止めるみたいなストーリーもありえたと思うんですが、そうはしていない。

 

その上、私はこの「逃げに徹する」というのが、この作品のポイントだとすら考えています。

ハイスクール・フリート」は、ガンダムのように「殺すか殺されるか」の戦争を描く作品ではない。かといって、ガルパンのように戦いそれ自体をゲーム化・遊戯化しているわけでもなく、危機の中で生き抜く少女たちを描いている。

戦争ではない以上、相手を倒すよりも自分が生き残るほうが大事になる。そういう意味で、逃げに徹することになるわけです。晴風の舵取りを担うのがリンちゃんだというのは、作品全体の持つ意味とも非常によくマッチしていると思いました。

 

そもそも、横須賀女子海洋学校はブルーマーメイドを育てる学校です。ブルーマーメイドは、実質的に海上自衛隊のような役割を果たしているとはいえ、本来は軍事力を行使したり敵を攻撃するための組織ではない。そのような点を考えてみても、「相手をボコって生き残る」みたいなのは、この作品には合わない。むしろひたすら逃げ続けるのがこの作品に一番合った展開だったと思います。

 

ハムスターはそんなにダメか?

はいふりに対する最も目につく批判は、「ストーリーがハムスターオチなのがダメ」というものです。

まあ気持ちはわからんでもないのですが、逆にハムスターを入れることで可能になった演出もいろいろあったと思うのです。

 

例えば、はいふりは1話からいきなり修羅場を迎えます。1クールアニメの作りとしては、まず1〜2話で日常パートを流しつつ世界観・キャラクターの紹介、3話くらいからストーリーが展開していく…という流れのものがままありますが、はいふりは1話後半にしていきなり超展開になるわけです。

この勢いは、私は評価できると考えています。1話・2話というのは作品のつかみの部分であって、ぜひ続きが見たいと思える作りになっています。(かく言う私も、1話を見て続きが気になってしまい最後まで…という人でした。)

確かに日常パートが少ないぶん、登場人物全員をしっかりと紹介したり、サイドストーリーを挿入したりといった部分はありません。正直、1周で主要キャラの名前をどこまでちゃんと覚えられるか…という面はあると思います。しかしそれも短い尺の中で何を入れるかという問題です。はいふりの場合、各々の役割分担がはっきりしているので、キャラ紹介をだらだらと続けるよりも戦闘シーンの中でこまめに個々のキャラを出していくという方針で良かったと思います。

 

で、ハムスターの謎は途中で解明されるわけですが、それまでは晴風は「何が起こっているのかわからないけどとにかく逃げないといけない」という状況に置かれます。

この五里霧中のストーリーを演出できたのも、ハムスターのおかげなのです。

ハムスター以外にも撹乱要素があっても良かったかな、という気もしますが、ひとまずは作品全体にほどよい緊張感を与えてくれる要素になっていたように思われます。

 

はいふりはもっと評価されるべき

以上を踏まえると、はいふりって結構オリジナリティのある作品に思えてきませんか。

いろいろと(主に尺が足りてないせいで)不十分な点はあるにせよ、創意工夫に満ち溢れた良作だ、というのが私の感想です。

それにTrySailのオープニングと春奈るなのエンディングは共にとても良いものです。個人的にはオープニングは映像・音楽ともに近年のアニメの中でトップクラスに気に入っています。

そういうわけで、すでに放送終了して第2期があるかどうかも微妙な雰囲気の作品ですが、「ハイスクール・フリート」のことを好きになる人が増えたらいいなあと思っています。

 

……横須賀で海軍カレー食べてみたいなあ。